Jewelry

始まりは「Muku」無垢と名付けた一つのリングからだった。森に落ちていた枝の朽ちた木肌、海岸に流れ着いた流木の打ち傷。思い描くその佇まいになるまでひたすら手を動かす。手は作り手の心を映し出す。道具を置き、手を止めた瞬間それが現れる。同じように作っていてもその時の季節、空合い、心情でひとつひとつ表情が違う。型での生産では決して出し得ない温かみを、鍛造で地金と対話しながら一点ずつかたちにしていく。アトリエで生み出されるジュエリーの独特なテクスチャーは、長年かけてヨーロッパで蒐集してきたアンティークの道具に手を加え、時間をかけて独自のものにリメイクしているが故である。

緻密に削り出した枠に極小ダイヤモンドを一粒ずつ石留めをしていく気の遠くなるような作業から生まれる「Jubilee」は、まるで野花を集めて束ねたブーケや花飾りのように心に安らぎを与えてくれる。ショコラティエが創作する一粒ずつ形も味も違う宝石箱のように、様々な色や形のダイヤモンドを遊び心と共にゴールドの箱に詰め込んだ「Chocolat」のシリーズは、体のパーツをいつも美く引き立ててくれる。フランス庭園などに見られる植物の配置の芸術的な造形美を表現した「Jardin」。リングを数本重ね付けすると自分だけの庭園が現れる。独自の視点で選別したユニークで幻想的なダイヤモンド。それぞれ一粒に合わせて創作していくビスポークシリーズ「Amulet」は、エンゲージリングや自身のご褒美として。優美な舞曲を踊る女性のドレスに生まれるドレープのように絶妙なバランスで成形された「Waltz」のリングは指の上で魅惑的な表情を見せる。